Webプロデューサーのノート

デジタルマーケティング、Webサイト開発を生業としているWebプロデューサーのTipsとかポエムとか

ZOZOTOWN(スタートトゥデイ)のIR情報から学ぶWebサービスにおける管理会計、そしてレポートの目的

なぜWebサイトの運営でレポートを作るのか?

Webのレポーティングを仕事としている人はたくさんいらっしゃると思いますが、本稿ではそのレポーティングの目的に立ち返る話をしたいと思います。

筆者なりの結論をひとことでまとめると、

なぜレポートを作るのか→管理会計のため→経営のため

だと思っていて、そのためにレポートを作っています。

なんとなくGoogle Analyticsなどのアクセス解析ツールで数字を見たり、上がってくる売上の数字は見ているんだけど、それをどう生かすかわからない方向けに書いてみたいと思います。

管理会計とは?

管理会計という言葉についてはわからない方はこちらが参考になるかと。

keiei.freee.co.jp

まず管理会計の反対語、財務会計についてですが、これは主に売上、利益、経費、資産、負債を管理するものです。 会社を運営する上で必ずやらなければいけないものです。これやらないと納税も出来ませんしね。

財務会計は会社の経営状態を見るものとしては有益なレポートですが、このレポートからどんな施策が良かったのか、悪かったのか、理解するのは困難です。 ただし、事業そのものの利益率が良いとか、売上の割に社員が多い・資本が多いとか、販管費が掛かりすぎとか、在庫抱えすぎとか、そういった情報はわかるのでWebプロデューサーはもちろん財務会計も把握した方が良いです。

そしてWebサービスにおける管理会計について話を移します。

ここでは話を分かりやすくするために、ZOZOTOWN(スタートトゥデイ)のIR情報をベースに話したいと思います。

www.starttoday.jp

ZOZOTOWNのIR情報は通販に携わっている人は絶対に見るべき情報です。 そして、自社のサービスのレポートを作成したとき、ZOZOTOWNの凄さがもっと理解出来ると思います。 あやかりたいですね。

以下、ZOZOTOWNの「2018年3月期 決算説明会資料」見ながら進めていきます。 https://image-contents.s3.amazonaws.com/wp/wp-content/uploads/2018/04/20180427_2018Q4_J.pdf

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ZOZOTOWNヤバい

管理会計の話に入る前にこの資料から読み取れる、ZOZOTOWNの凄さを筆者なりに考察してみます。

  • 年間700万人を超える購入者はもちろんすごいが、それ以上にアクティブ会員の年間購入金額、年間購入点数が化け物。リピート率がヤバい。アパレル通販経験者ならこのヤバさがわかるはず。
  • 昔と比べたら買取ショップ率が減って、受託ショップがほとんどとなっている。これはアパレル業界では有名な話ですが、ZOZOTOWNは在庫を抱えてないんです!売れ残って損害を出す心配が無いとも言えます。
  • 売り上げが上がる時、販管費(プロモーション費用)の比率が上がる会社も多いですが、販管費率はずっと低水準をキープ。
  • 会員の年代比率が意外と言ったら失礼だが幅広い。30代後半も多い。出店ブランドが増えてきて網羅性が高いのも要因かもしれない。これは過去の年代比率と比較したら関連がわかるかもしれない。

他にも、設備投資が増えているのはZOZOSUITの影響なんでしょうか、気になる点、称賛すべき点はまだたくさんあるんですが、この辺にしておきます。 最近のZOZOTOWNのニュースと言えば、ZOZOSUITであったり、前澤社長の恋愛事情であったりしますが、アパレル不振と言われる昨今でも経営状況は本当に盤石ですね。

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管理会計で登場する言葉

これは決算説明会の資料ですから、販管費とか営業利益とか財務会計で出てくる言葉も登場しますが、ネット通販における管理会計で、よく登場する言葉をピックアップしてみます。

  • 年間購入者数
  • アクティブ会員数
  • アクティブ会員1人あたりの年間購入金額、年間購入点数

ほかにも登場する言葉はありますが、この辺にしておきます。

もしかしたら会員数などは管理会計の項目じゃない、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、管理会計は財務会計で意思決定が難しいという背景から生まれたものだと思っていますし、企業独自で決めていいものです。 実際ZOZOTOWNの内部でどう決めているかはわかりませんが、売上の伸びと会員数・リピート率・客単価は連動しますし、分けて管理する方が面倒ですよね。 管理会計は財務会計もINPUTとしてして使いますし、Webの数字をINPUTとしても良いし、経営判断しやすいルールを作れるかが重要かと思います。

kinjo.hiroshi.world

前にデータ設計の大事さについて書いたんですが、ここで

「データはクロスさせると価値が出る、これだけは覚えて帰ってください!」

と吼えました。管理会計についてもそれは言えると思います。

財務会計とCRM(顧客管理)と販売管理とWebのデータをクロスさせたら価値が出るわけです。

このZOZOTOWNの決算説明会の資料も財務会計以外の数字が多いですよね。ピックしている数字がセンスを感じる。

KGI・KPIは管理会計と連動する

Webのレポートで出てくる言葉として、PVとかUUとかCVR(転換率)とか直帰率とか離脱率とかいろいろありますが、何のためにそれらの数字を改善するのか、立ち返るための管理会計とも言えます。

目標(KGI)として「売り上げを上げよう!」だとざっくりしすぎだし、「UUを上げよう!」だとそれが売り上げにつながるか、関連が掴みにくいです。

例えば、リピート率を上げるための施策として、メルマガは重要ですが、メルマガからの購買を〇%増やすという目標(KPI)を立てたとして

  • メルマガの開封率が上がるようなタイトルを付けよう!
  • メルマガからランディングしたときのCVRを上げるために、セール品をレコメンドしよう!
  • メルマガからの購買をセグメントを切って分析し、悪いセグメントは原因をさぐろう!興味のない商品をレコメンドしているかもしれない。

こんな施策・対策を考えたとします。

そうするとそれに必要なレポートも自ずとわかると思います。 単純なセッション数やCVRのレポートでは良し悪しはわかりません。

そして、こういった施策の積み重ねで「アクティブ会員1人あたりの年間購入金額、年間購入点数」が向上していくわけです。

つながっているんですよー!

管理会計と繋がらないレポートをわざわざ作るのはもったいないというか、分析ツールの画面で十分だと言えます。

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アメーバ経営は管理会計の発展

「アメーバ経営」という言葉、聞いたことはありますか?

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これは京セラ、KDDIの創業者である稲森和夫氏が作り上げた経営手法です。 稲森和夫は経営破綻したJALの再生も任された人で「経営の神様」とも呼ばれていますね。 「アメーバ経営」について、ここでは細かい話は避けますが、京セラでは部門別・事業別の数字を末端の社員まで把握していて、組織全体で経営に参加する意識があるわけです。

「アメーバ経営」の仕組みやシステムなどは書籍を読んで欲しいのですが、このアメーバ経営で共有する数字は財務会計の数字というより、管理会計の数字になります。 やはり事業の目標を立て、その数字を達成するための共通言語として財務会計だけだと使いにくいんです。

(個人的には日本の経理のシステムは本当にダメだと思っています。ずっと変わっていないし。いろいろ言いたいことはありますが、一番の問題は経理が管理会計に理解がない!だから変わらないとも思います。)

本稿では「レポートの目的と管理会計」というテーマで書き始めましたが、管理会計は経営のために重要なのはわかって頂いたと思いますし、そのネタとなるレポートも経営のために重要なわけです。

目的もわからずに、ただ作業としてレポートを作っているのは非常にもったいないです!

最後に

ZOZOTOWNのIR情報は本当にわかりやすいし、通販ビジネスにおいて、どこが重要な変数か管理部門がわかっているし、インターネット企業で働く人は一度は見ることをお勧めします。

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