紙からWebメディアの編集を始める編集さんに知っておいて欲しいこと
前にこんな記事を書きました。
この問題ってデザイナーだけでなく紙媒体からWebメディアの編集を始めた方にもあるかと思います。
つまづく部分って似ているのですが、今回は編集にフォーカスして、留意しておいて欲しいことを書いてみます。
「おれは編集だからWebデザインは知らね(*´Д`)」っていう編集はいないと思いますし、編集はデザイナーに指示を出すことも多いので、先の記事の内容は読んでる体で書きます。
- Webメディアはタイトル命
- サムネイル画像も重要
- SEOを踏まえた文章を書く
- コンテンツは流通する、プラットフォームの存在
- 記事の単価について
- SNSの存在
- フロー型のコンテンツ、ストック型のコンテンツ
- 広告について
- 校正が雑なわけじゃない、文化が違う
- 今後さらに、紙からWebに移る編集は増えていく
- 編集長はひっぱりだこ
- 誰とWebメディアを作るのか
Webメディアはタイトル命
- Webはクリックされて始めて見られる
先の記事でも書きましたが、この点を補足しますとWebメディアはタイトルが紙より10倍重要です!
タイトルはいろんな期待を背負っています。
- クリックされなければ見られない
- SEOも考えなければいけない
- ソーシャルでシェアされたい
タイトルの重要さはこちらの記事からもわかると思います。
あと、Webメディアは紙と違ってテンプレートにはめるので、タイトルに文字数の制限を設けているケースが多いです。
Yahooトピックスの13.5文字という制限は業界でも有名な話ですよね。
ただタイトルが短いと良くわからない場合があるので、記事ページ用、サムネイル用の2種類のタイトルを設けたりします。
サムネイル画像も重要
クリックされるサムネイル画像については、こちらの記事も参考になります。
彼らは主観に固執せずデータに基づいてノウハウを貯めていますよね。
これはWebっぽい考え方なんだと思います。
また、出版出身の方ってピンボケした写真は許せないと思いますが、Webメディアだと全然ありです。 むしろ写真が綺麗すぎると広告臭がしてクリック率が下がるというケースは多いと思います。
当ブログはサムネイル画像を設定していないくせに偉そうですが(;^_^A
SEOを踏まえた文章を書く
見る・読むのは人間だけではない
先の記事でも書きましたが、文章はSEOという集客方法のキモです。
おすすめの本を挙げておきます。
- 作者: 瀧内賢
- 出版社/メーカー: 技術評論社
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この「SEO内部対策の教科書」は私がメディアを立ち上げるたびに、編集さんに薦めている教科書的な存在です。
SEOは大きく分けて内部対策と外部対策があり、内部対策というのはコンテンツそのものの対策を指します。
編集はコンテンツを作るのが仕事です。
ですからSEOがわからないWebメディアの編集はもう通用しません。
SEO内部対策をざっくり説明すると、ユーザのニーズが高いキーワードをtitle,description,h1,h2,strongのような重要なタグにバランスよく設定することです。
あと共起語の考え方も抑えおきましょう。
また、外部対策についてもコンテンツは有用です。
外部対策とは外部のサイトからリンクをもらうこと(バックリンク)で、SEOの効果を上げることを指します。
良いコンテンツというのは、
- 当ブログも有用な外部のコンテンツのリンクをたくさん貼っています。こんな形でバックリンクを得られます。
- SNS自体はSEO効果はあまりないですが(はてなブックマークは効果あります!ぜひ当記事もブクマしてくださいw)SNSにシェアされることにより、やっぱりバックリンクを得られやすくなります。
- 良いコンテンツというのは、後述する記事の流通により、バックリンクがもらえる可能性があります。ただし、媒体から得られるリンクはnofollow*1のケースが多いですが、たまにdofollowのリンクが得られます。
また、外部対策は競合サイトを良く調べるということが有用です。
それについては当ブログでも書いていますので、SEOの知識を深めたい方は、ぜひ読んでみてください。
コンテンツは流通する、プラットフォームの存在
プラットフォーマーとして、一番有名なのはYahooニュースかと思います。
今ではYahooニュース自体もコンテンツを制作しておりますが、基本的にYahooニュースは他媒体が制作した記事をYahooニュース編集部がピックアップして掲載するプラットフォームです。
プラットフォームとメディアの関係が垣間見える、興味深い記事です。
Yahooニュースは20年を超える歴史があるんですね~
プラットフォームはしばらくYahooニュース1強時代だったようですが、今では、
Gunosy、SmartNews、LINEニュース、Antenna、、、などなど増えて来ています。
プラットフォームに記事を転載するメリットとして
トラフィックが稼げる。Yahoo砲とかGunosy砲という言葉を聞いたことがあると思います。
プラットフォームやメディアの力によっては、広告収入をプラットフォームと分け合うケースもあるようです。私は経験無いですが。
また、プラットフォームだけでなく、メディア同士でも記事を転載する場合もあります。
プラットフォームに転載する方法
プラットフォームには「問い合わせページ」が設けられている場合が多いので、そこから申請する形となります。
例えばLINEニュースの場合はこちらのページです。
もちろん、申請して必ず転載が許可されるわけではありません。
それなりに自メディアが育ってなければいけませんが、規模が小さいから無理、というわけでもありません。
オリジナルの有用な記事を書いていて、ユーザからの反応が良いことの方が重要かと感じています。
逆に規模が大きくても、プレスリリースのリライトばかりの内容の薄いメディアだと転載は難しいかなと感じています。
プラットフォームに記事を転載する際の技術的な話
方法は大きく2種類あります。
- LINEニュースなど人による編集がメインの媒体に転載する場合は、特別な仕組みは不要なことが多い。
- SmartNewsやAntennaなどマシンによるレコメンドを行うような媒体に転載する場合は、転載用のRSSの開発が必要なことが多い。
例えば、SmartNewsのRSSの仕様はこちらに公開されています。
SmartFormat 仕様書 - SmartNews媒体運営者向けサポート
プラットフォームに転載する際の注意点
- 当たり前ですが、自メディアの記事広告、ネイティブアドは転載できない。
- 複雑なレイアウトの記事は転載するときに崩れやすいので、記事のフォーマットはシンプルに。最近はAMPもありますしね。
- 権利関係はクリアにしておく。転載のたびにライターに許可を取るのは面倒なので、著作権は買っておいた方が楽。
ちなみに、こんな偉そうに語っておきながら、私自身はまだYahoo砲、Gunosy砲を受けたことはありません。。。
記事の単価について
記事に掛けられるコストが紙に比べてWebが低いというのは紛れもない事実だと思います。
極端な例ですが、CrowdWorksやLancersといった、クラウドソーシングに上がっているライティングの仕事を見ると1記事の単価が200円!という価格帯の案件が乱立しています。
ただ、この話がちょっと先走ってると感じることがあります。
確かにSEOを考えると記事の本数というのは重要で、安い単価のコンテンツを使ってSEOを高めることも可能です。
しかし質の悪いコンテンツが多いサイトは、プラットフォームや別媒体の転載は困難になり、媒体のプレゼンスを上げることが出来なくなります。
反面教師としてDeNAのキュレーションメディアの問題を考えると理解しやすいかと思います。
安かろうはスケールしませし、良いものを作っていればスケールする、というわけでもありません。
まーこの辺のバランスを取るのが編集の腕の見せ所だと思うので、私が語るのはこの辺にしておきますが、プラットフォームの話は経営にコストを説明するときに使えますよ!
SNSの存在
FacebookやTwitterといったSNSは、集客の方法としてメディアとは切り離せないのは自明かと思います。
他にもInstagram、はてぶ、LINEなどありますので、それは自メディアのターゲットに合わせて運用したら良いと思います。SNSもたくさんあるので全部しっかり運用するのは大変です。
「若者向けなので、Instagram、Twitterの運用を厚めにしよう」とか「写真は重用ではなく、テキストが重要なメディアなのでInstagramは捨てよう」みたいな感じで絞るのはアリかと思います。
また、メディア自体の広告として、Facebook広告、Twitterの広告は役に立ちます。
メディアはターゲット(ペルソナ)を想定し、コンテンツを制作するものだと思います。そしてSNSの仕組みは、ユーザがどんなサイトをフォローしているか、誰と誰が繋がっているのか(興味関心が近い人同志が繋がっている)を把握しています。
ユーザの興味、関心に対して広告を出稿できるわけなのでメディアの広告としてSNSは相性がいいわけですね。
ソーシャルについてはFacebookだけでたくさん記事を書けそうなので、このぐらいの言及に留めておきますが、役に立つ記事をピックアップしておきます。
個人的にはFacebookページのいいね!(記事のいいね!ではない)とTwitterのフォロワーを増やすのが、SNSの最重要KPIだと思っていますが、それについては今度記事を書いてみたいと思います。
フロー型のコンテンツ、ストック型のコンテンツ
この記事を読めばフロー型のコンテンツ、ストック型のコンテンツを理解できると思います。
ちなみにこの記事の著者の田端新太郎さんの本はメディアビジネスに関わる人の教科書的な存在なので、読んでみることをお勧めします。
MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体 宣伝会議
- 作者: 田端信太郎
- 出版社/メーカー: 宣伝会議
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- メディア: Kindle版
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出版におけるフローとストック
出版に置き換えると、新聞は日付が変わると新しい新聞が発行されますし、雑誌の場合は週や月が変わると新しい雑誌が出るので、新聞や雑誌はフロー型のコンテンツです。
一方で本屋に行けば「村上春樹」の小説はだいたい置いてますから、名著と呼ばれる書物はストック型です。
Webメディアにおけるフローとストック
Webの場合、Yahooニュースみたいなニュース系・時事ネタなどはフロー型、Wikipediaのような辞典やTipsなどのネタはストック型に分類できます。
Webの場合は出版と違って本屋の場所を押さえる必要がないので、出版よりはストック型と相性が良いと思いますが、ここで抑えておきたいのはコンテンツの種類による流入経路とアクセスの伸び方の違いです。
フロー型、ストック型の流入経路とアクセスの伸びの違い
ストック型のコンテンツの集客方法としてはSEOが重要です。 何かを知りたい、調べたいという場合は検索することが多いからです。 ただし、SEOというのは良いコンテンツを書いていても緩やかに伸びていきますし、みんなが一斉に同じトピックを調べるわけではないので爆発力はありません。 その代わり、長い間役に立つコンテンツであれば、長い間アクセスを稼げます。まさにストックです。
一方でフロー型のコンテンツの場合は、既に読者がついている即時性や更新性の高いメディアが有利でストック型よりはSNSでシェアされやすく、爆発力があります。 時事ネタについて、深い考察のある記事なんかは私もTwitterで良く目にします。Twitter自体がフロー型のメディアというのもありますね。
ただし、フロー型のコンテンツは旬を過ぎるとアクセスはあまり稼げなくなります。
ちなみに当ブログはストック型のコンテンツを中心にしますが、この記事のタイトルはSEOに向いていません。。。
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広告について
Webメディアってページの制限が無いのですが、広告枠がある程度決まっている、純広告も当然あります。
すごい量のWebメディアの媒体資料を調べた記事です。骨の折れる作業だったろーなと想像できます。
ただ、純広告を出せるようになるにはある程度のPV・UUが必要になってきます。まーこれは出版も部数が必要ですから一緒ですよね。
出版とWebメディアの広告で大きく違うのは、
- 広告主が媒体を選ばなくても広告を出稿出来る→アドネットワーク
- 課金体系の種類がいろいろある。掲載課金、Imp課金、クリック課金、成果報酬。
このあたりかと思います。
アドネットワークの存在
アドネットワークの説明はこの記事がわかりやすいかと。
Google AdSenseとYahoo! ディスプレイアドネットワーク(YDN)がアドネットワークの2台巨頭かと思いますが、その他にも多数のアドネットワークがあります。
広告主にとっては、無数にある媒体をいちいち選んで出稿する手間がなく、媒体側にとっては広告営業を設ける必要が無いというメリットがありますが、媒体側にとってはやはり単価の低さが気になると思います。
さまざまな課金体系
純広告の場合は基本的には掲載課金型ですが、Imp保障をしているケースもあります。
その他にもクリック課金やImp課金、成功報酬という形があります。
成功報酬といえばアフィリエイトですね。
アフィリエイトの仕組み|アフィリエイト初めてのかたへ|アフィリエイトのアクセストレード
この記事はアフィリエイトの仕組みの説明です。 Webってユーザが最終的に商品を購入したのかトラッキング出来るので、こうして成功報酬という仕組みが成り立つんですね。
アフィリエイトって個人ブログやアフィリエイターが作ったアフィリエイトサイトのイメージが強いと思いますが、今後は大手Webメディアでもアフィリエイトの広告が増えていくんじゃないかと個人的には思っています。
ちょっと話はズレますが、ZOZOTOWNは基本的に在庫を持たない、消化仕入れが基本の通販サイトです。売れたときに仕入れと売上が同時に立ちますからある意味成功報酬で、CVポイントに近いアフィリエイトサイトだと言う人もいます。そしてZOZOTOWNをチェックするのも、ファッション雑誌をチェックするのも、ユーザ心理としてはそんなに変わらないケースがあると思います。ファッション括りだとIQONというコーディネートアプリもあります。
つまり競合はWebメディアだけじゃないということを頭に入れておくといいかもしれません。
広告制作部をもっているWebメディアの方がレア
特に雑誌の場合、広告営業と広告制作部、編集部と役割が分かれていることがあるかと思いますが、Webの場合は一緒のケースが多いです。
元々ITの我々からすると、
「仕事選んでんじゃねーよ」
となるので、理解を期待しない方が良いです。
これは文化だと思って割り切ってください。
校正が雑なわけじゃない、文化が違う
出版と違い、Webメディアは24h365、コンテンツを公開できます。即時性の強いメディアです。とことんフロー型に寄せられます。
なのでLINEニュースは3交代制の24時間体制を敷いていると聞きます。
新鮮な情報があるということは、それだけでメリットです。校正に時間を掛けられません。
今では新聞よりNewsPicksが制作した記事の方が新鮮だと感じることがありますし、新聞と違ってページの制約が無いので、インタビュー記事なんかは新聞より面白いと感じます。
一方で出版は日刊紙、週刊誌、月刊誌という形で区切りがあり、印刷すると後で修正が効きません。 なので校正はWebより厳しくやっていると思います。
これはもう文化の違いです。 出版出身の人がWebメディアの記事は校正が雑だ!みたいな話をすることがありますが、文化が違うんです。
また、先に述べた通りコンテンツは流通します。
自メディアのトンマナを一生懸命揃えたとしても、その記事を見ているプラットフォームが違う場合があります。
また、見ているコンテンツのカテゴリが読者によって偏っているという場合もあります。 雑誌だったらお金を出して読みますので、貧乏性の私なんかは購入した雑誌のほとんどのページをくまなく見ちゃいますが、Webの場合は自分の好きなカテゴリの記事だけ見る、というケースが多いわけです。
こういう特性を踏まえた上で、校正をどこまでコストを掛けて行うのか、考えるべきです。
あと、私の記事の校正が甘いのは多めに見てくださいね(´▽`)
今後さらに、紙からWebに移る編集は増えていく
この記事は約30年に渡る広告費の推移をグラフ化した、とてもわかりやすい記事です。
新聞・雑誌の広告費はこの30年で大きく下がっており、逆にインターネットの広告費は大きく伸びています。
テレビが今でも1位であることは変わりませんが、この先10年でインターネットがテレビに追いつきそうな勢いです。
これはもう、インターネットにシフトする編集さんが増えるのは火を見るよりも明らかです。
編集長はひっぱりだこ
これは出版の場合もそうだと思いますが、Webは媒体が多数あり、しかもどんどん増えていっています。
出版業界より編集長が足りまへん!
媒体の方向性、マネタイズを考え、編集やライター陣をまとめ、広告主と良い関係を築く編集長はそりゃーもうひっぱりだこです。
確かに出版よりWebメディアの収入は低いかもしれませんが、チャンスは多いかなと感じています。
誰とWebメディアを作るのか
編集長が新しい媒体を作る時、恐らく私のようなWebプロデューサーと組むことになるでしょう。
私は編集長がどちらかというと苦手な予算編成からシステム開発、マーケティングまわりを担当します。
その他にもエンジニアやマーケッターといった、出版ではあまり絡まない人と仕事をする機会が増えると思います。
Webプロデューサーはターゲット、マネタイズ、方向性は編集長と一緒に考えますが、私の場合は基本的にコンテンツの内容については、あまり口出ししないようにしています。
編集権の独立は尊重します!
ただし残念ながら、編集のWebの知識が不足していて意見が別れることが多数あります。
経営がWebメディアを理解していなくて意見が割れることもありますね。
もちろん歩み寄る努力をすべきですが、もう少しWebを理解して欲しいなー、と思うわけですね。
意見が割れたとき、この記事が役に立つといいんですけど。
*1:リンクを貼る時にnofollowを指定すると、検索エンジンに対して「リンク先を評価しない」という指示になり、SEO効果がありません。