オウンドメディアを作るときの準備の話
筆者はいくつか企業のオウンドメディアを作ってきたんですが、始めるときの準備が一番重要かなと感じています。
私の仕事はWebプロデューサーなのでコンテンツ自体を作ることはないのですが、この準備のところが腕の見せ所ですね。
今回はオウンドメディアを作るときの準備について、筆者なりにまとめてみました。
- ターゲットを明確に
- 目標を明確に
- 競合、もしくはターゲットが似ているメディアを参考にする
- KGI、KPI、予算をたてる
- 体制を構築する
- コンテンツ設計=集客の設計
- オウンドメディアは本体サイトのSEOにも寄与出来る!
- オウンドメディアでも大手メディアに転載できる!
- なぜオウンドメディアは失敗するのか?
- 最後に
ターゲットを明確に
当たり前ですが、まずはターゲットを設定しなければいけません。
玉虫色のターゲット設定だと、コンテンツも刺さらないし読者もつきませんから、絞る方がやりやすいと思います。
例を挙げてみますと、
- 自社の商品・サービスを利用してくれるエンドユーザ
- 取引先企業
- 自社への転職希望者向け(IT企業だと技術者の確保が大変なので良く見ますよね!)
事業の課題から考えてみると良いと思います。
また、エンドユーザの場合でもその中でも女性に絞るとか、シニア層に絞るとか、いろんなケースがあると思います。
ターゲットの属性によってコンテンツの内容、集客の方法、サイトのデザインなどが変わってくるので、ここがブレたメディアはもう最初から厳しいです。
目標を明確に
やっぱりWebメディアなので、KGI、KPIに落としたいのですが、その前に大まかな目標を設定しましょう。
例を挙げると、
- 広告費を削減する
- 今までリーチ出来なかった層を獲得する
- 獲得、問い合わせを増やす
- エンゲージを高め、リピートを促す
- ブランディング。例えば専門性の高い情報を発信するとか、安全性をアピールするとか。
ターゲット設定と同様、事業の課題から考えると良いと思います。
競合、もしくはターゲットが似ているメディアを参考にする
ぜひAhrefsやSimilar Webを使って競合サイトを見まくってください。
Ahrefs(読みはエイチレフス)はSEOの分析をするためのツールです。 Ahrefsで分析できることはたくさんありますが、競合サイトがどれだけオーガニックの流入を稼いでいるか、どんなキーワードで集客しているか、バックリンクの質と量、リンクビルディング方法などを調べれば目標も立てやすいかと思います。 あとAhrefsは競合のソーシャルで跳ねている記事も探せます。
Ahrefsで何が出来るかは当Blogでも書いていますので、ぜひ参照ください。 kinjo.hiroshi.world
Similar Webで出来ることは、この記事がわかりやすいかと。さくっと競合サイトの実力を調べられます。
具体的にどんなところを見るかと言うと、
- 月間PV、UU、滞在時間など
- 集客方法の割合。SEO、ソーシャル、参照サイト、、、
- SEOで集客出来ているキーワード、SEOで集客出来ているページ
- ソーシャルで跳ねているページ
当然コンテンツも重要なのですが、見るべき観点として。
- 月間でどれくらいの数の記事をあげているのか
- 1記事のコストを大まかに予想する
- どんなカテゴリがあるか
- SNSのフォロワー数は?
こんなところでしょうか。
1記事のコストについてですが、本当に千差万別です。
取材記事なら1記事あたりライター1日の人件費が掛かりますし、写真の質に拘りたい場合、カメラマンが入っていますからカメラマンの人件費もかかります。 弁護士や医者など専門的な知識が無いと書けないような記事の単価は高いですし、「ダイエット」や「芸能ネタ」などは単価が安いと思います。
また、調べるサイトとしては、必ずしも競合やジャンルが近いサイトである必要はありません。 ターゲットが近ければ参考にして良いと思います。 例えば美容の話も恋愛の話も、若い女性というターゲットが似ているのであれば参考になります。
KGI、KPI、予算をたてる
ここまでの「ターゲット設定」「目標設定」「競合の調査」が出来れば、KGI、KPI、予算をたてることが出来ると思います。
大まかな目標によってKGI、KPIは変わってきますが、
- 目標とする月間PV、UU
- 1カ月の記事本数
- 事業本体の問い合わせ数の目標
- ブランド認知度のアップ(指名系ワードの検索数の増加目標)
- SNSのフォロワー数
このあたりが決まってくれば予算も作れますね。
筆者の場合は「広告費を削減する」という目標を設定するケースが多いのですが、その場合はリスティング広告やディスプレイ広告や記事広告のコスト、CTR、CVR、CPAなどを鑑み、あとは自分の勘と経験を頼りにKPI(PV、UUなど)を設定したりします。
※.2017/7/29追記
「勘と経験」という形でざっくり片付けてしまったので「広告費を削減する」という目標を立てた場合の、筆者なりのKPIの作り方を書いてみます。
あくまで自己流なのでツッコミは大歓迎です!
例えば健康食品系通販サイトの会員獲得のためのオウンドメディアで「広告費を削減する」という目標を立てたとします。 健食系はやったことないので、そんなに勘は働かないですが、、、
リスティング広告が例えば下記の成績だと仮定します。
- CPA = \10,000
- CTR = 2%
- CVR = 1%
- 広告のコストは500万/月
そしてオウンドメディア側の数字を勘で仮定します。
- オウンドメディアからLPや本体サイトへ送客する率は1%
- オウンドメディアからのCVRは1%
送客率が広告のCTRより低いと仮定したのは、そもそもコンテンツを見たユーザは購入を検討しているユーザではなく、コンテンツを見に来たユーザですからね。 CVRを広告と変わらず1%としたのは、記事広や商品の設計次第(健食の場合はお試しキャンペーンとか多いですよね)では十分広告と同じパフォーマンスは出せると仮定しました。
ホント、これは勘です!
そして目標を広告費換算で100万/月だと仮定します。100万/月あればメディアを維持しつつ、初期投資も改修出来るというこれも仮定です。 そうすると目標とするUU/月は、
1,000,000 ÷ 10,000 ÷ 0.01 ÷ 0.01 = 100万UU/月!
100万UUはメディアをやったことがある人はわかると思いますが、かなり難易度の高い数字です。 でもここで着目して欲しいのは送客率を2倍にすれば50万UUでいいし、さらにサイト全体のCVRを2倍にすれば25万UUでクリアできます。まーそれも難易度が高いですが、、、
まずはユーザをある程度集めることが重要ですが、集まったあとはCVR、送客率を上げる調整をしていけば良いと思います。
また、後述しますがオウンドメディアは本体サイトのSEO対策としても使えますし、健食の場合はLTVを上げるためのコンテンツとしても使えると思います。 それらも鑑みて費用対効果を考え、目標は定期的に見直せば良いと思います。
体制を構築する
メディアを作るときにはWebデザイナー、エンジニアが必要ですし、運用するときには編集者、ライターが必要ですね。 オウンドメディア自体の集客をする際にはマーケッターも必要かもしれません。最近はSNSを運用する人も重要ですね。
あと編集長というのは決めておいた方が良いと思います。メディアの顔でもありますし、編集の方針について最終的に判断する人間は必要ですよね。
私の場合は、Webメディアシステムの開発のライフサイクルまで決めてしまいます。チケット管理はどうするとか、リリースが簡単なようにGithubを設定しておくとか。
Webメディアも作ったら終わりでなく、始まりですからね。
座組こそ、Webプロデューサーの腕の見せ所だと思います。
もちろんシステム開発はベンダーさんに任せちゃうのもひとつの方法ですが、私はあんまり好きじゃないです。 だってサービスを伸ばすっていうのは一番おもしろいとこですしね!
コンテンツ設計=集客の設計
オウンドメディアの場合、コンテンツ設計=集客の設計です。
ノウハウ系はSEOに強いですし、ペルソナぴったりのコンテンツはSNSで跳ねるかもしれません。 どちらを取るか?という話ではなく、両方あった方がよいですし、それに合わせたカテゴリやコンテンツを考えたら良いと思います。
SEOに関してはキーワード設計、カテゴリ設計、それに必要な記事の洗い出しという順番になると思います。 競合サイトのチェックがここで生きてくると思います。
SlideShareで良記事があったので貼っておきます。
あと、そのオウンドメディアを表現するメディアのタイトルやコピーも一緒に考えたら良いと思います。
読者にひとめで理解させることが出来れば、そのタイトルやコピーは成功ですね。
オウンドメディアは本体サイトのSEOにも寄与出来る!
まず考えたいのはオウンドメディアのドメインですが、本体サイトと同じドメインなのが一番です。
理由としては、
- 例えば本体サイトの商品ページみたいなものよりコンテンツはバックリンクを獲得しやすい。
- オウンドメディアのドメインが本体サイトと同じドメインならば、オウンドメディアのバックリンクは本体サイトのバックリンクともいえる。
- オウンドメディアで記事をアップすれば、本体サイトの鮮度にも寄与出来る。
- オウンドメディアのSEO実績自体がそのまんま本体サイトのSEO実績となる。よく混同されるが、ドメインエイジが長いからSEO効果があるわけでなく、過去どれくらいSEOで集客できたかが重要である。
コンテンツの方がバックリンクを獲得しやすい理由としては、
- 当Blogもいろいろ外部リンクを貼ってますが、ノウハウ系コンテンツはBlogなどからバックリンクを得られやすい。
- SNSで跳ねたコンテンツで「はてぶ」が付いていれば、バックリンク効果がある。Twitter、Facebookのシェアにバックリンク効果はないが、Twitterのまとめサイトなどは効果がある。
- 取材記事の場合は関係者からリンクを得られることがある。
本体サイトとオウンドメディアでドメインが別の場合でもSEO効果は無くはないですが、その対策については息切れしてきたので割愛します、、、
オウンドメディアでも大手メディアに転載できる!
過去にWebの編集さん向けの記事でも書いたのですが、
WebメディアはGunosy、SmartNews、LINEニュース、Yahooニュースなどのプラットフォームに転載が可能です。(どのサイトでも出来るわけではありません。プラットフォーム側の審査があります。)
そしてオウンドメディアもWebメディアですからプラットフォームへの転載が可能です。
これは私自身も複数サイトで転載を経験しているので間違いないです。
またジャンル次第ですが、大手メディアだけでなく業界メディアへの寄稿なども可能です。 その場合はドシドシ売り込みましょう!
なぜオウンドメディアは失敗するのか?
まーひとことで言うと「準備をしていないから」になっちゃうのですが、失敗例を挙げてみます。
企業のPR・広報のつもりでやっていると失敗する
PR・広報の重要なミッションとしてプレスリリースを打ち、メディアに取り上げてもらう、というのがあります。
これは向いてる先があくまでメディアであってエンドユーザではありません。
なのでPR・広報のつもりでやっていると間違いなく失敗します。
例えば美人広報が有利なのは、メディア関係者が取材に行きたいからであって、エンドユーザには関係ありません。
また、大企業の場合は広報とマーケティングで部署が分かれているケースが多いと思いますが、採用メディアでない限り、オウンドメディアを担当すべき部署は絶対マーケディング部です!
編プロに丸投げは危ない!
自社にリソースが無い場合、編集プロダクションにオウンドメディアの運営を委託するケースがあると思いますが、編プロに丸投げは危険です!
例え編プロがそのオウンドメディアのテーマの経験者としても、彼らが得意なのは基本的に取材、撮影、ライティング、校正などです。
つまりマーケティングが得意ではないケースが多いんです。
マーケティングのためにオウンドメディアを運営しているのに、オウンドメディア自体がマーケティング出来ていないという、本末転倒にならないように気を付けたいですね。
座組に無理がある
オウンドメディアを始めるときに、今いるメンバーの業務に追加する形でやると、本業が忙しい時もありますので無理が来てうまくいきません。 月に3記事程度の量のオウンドメディアはやる意味がないと思いますし、少なくとも編集一人は確保しないとうまくいかないと思います。
オウンドメディアは誰でも始められるものですが、メディアとしてプレゼンスを出すことは誰でも出来る、わけではありません。
最後に
あくまで、ここまでの話はオウンドメディアを作るときの、PDCAのP(PLAN)の部分です。
私自身がこの計画をここまで詳しくやってるか?というと、やってるときもありますし、「このジャンルのメディアはないからやってみよう!」という感じで勢いでやってるときもあります。 計画のどこかで、勘と経験が必要な部分もあるんですけど、この勘と経験の蓄積も、計画してるか否かで違ってくると思います。
そしてPLANが無いと、成功か失敗かはわかりませんし、失敗して撤退する基準もわからないですよね。
あと注意したいのは、オウンドメディアは即効性がある施策ではありません。SEOに覚えがある人はわかると思いますが、何か施策を打っても効果がでるのは3カ月後とかはよくある話です。個人的には3カ月周期で施策の評価、見直しを行っていけば良いと思っています。
オウンドメディアも経営にとっては投資なので、経営者にわかりやすいPLANを見せることは大事かなと思っています。