メディアをビジネスとして理解する一番の近道は「媒体資料」を読みまくること
私が初めてWebメディアの仕事をしたとき、とりあえずメディア事業について学ぼうと試みるのですが、メディアビジネスそのものの情報って意外と少ないんですよね。
メディアを概念的なものとしてではなく、商売としてどう成立させようか考えたときに、一番参考になったのが「媒体資料」です。
媒体資料とは、業界の人には釈迦に説法ですが、主にはそのメディアの各広告の価格表と、購読しているユーザの数・属性について書いているものです。
稲森和夫の言葉に「値決めは経営」という言葉がありますが、その言葉にならうと、「媒体資料をどう定義するかということは、メディア事業の経営そのもの」と言えるかと思います。
この「媒体資料」ですが、Webで公開されているものも多いので、今回はそれを見ていきたいと思います。
※.2017年5月調べ
TechCruchの媒体資料
TechCrunch
まずは私も読者のひとりである、TechCrunch日本版の媒体資料から見ていきます。
IT業界の人間なら一度は見たことがありますよね。海外の事情はSNS経由でTechCrunchをチェックすることも多いと思います。
媒体資料は下記のページからダウンロードできます。
http://advertising.aol.jp/techcrunch/
TechCrunch日本版のユーザ属性
TechCrunchの冒頭に端的にユーザ属性が書いてあります。
- 首都圏に住む、20代~40代の男性ユーザー中心
- 起業意欲が高く、米国と日本の最新IT関連情報を日々チェック
とあります。何となく納得。
そして、媒体資料を見ていて興味深いのは、
- ユーザの役職で経営者・役員クラスの割合が15.2%もある。
- 情報をシェアする方の割合が多い。
とあります。
経営者・役員の方々はソーシャルの世界でもインフルエンサーな場合が多いと思いますので TechCrunchのシェアが回ってくるよなーという私の体感とも一致します。
TechCrunch日本版の広告の価格
比較的メジャーなPCのレクタングルバナー(300×250)の価格だけ抜粋します。
レクタングル(PC):100万(75万imps想定)2週間
広告の種類としてはPC4種類、SP1種類存在します。ビジネス系なので、あまりSPを重要視していないのかな。
意外に思ったのがネイティブアドが無いんですよね。
で、TechCrunch本体の方を見るとやっぱりネイティブアドありました。
ネイティブアドも含めて日本版にない広告もいろいろありそうです。
ただし、残念ながら価格まではわかりません。
https://techcrunch.com/advertise/
これは私の考察ですが、TechCruchは世界で通用する技術やサービスの情報がベースだと思われるので、日本で閉じた内容の記事広告というのは、TechCrunch日本版を見ている読者の期待と合わない、だから日本版ではネイティブアドが無いのかと想像しています。
AppBankの媒体資料
APP BANK
スマホアプリ・ゲームとかガジェット系がメインのメディアです。
現代らしいメディアですよね。
下記ページから「【AppBank】2017年4-6月媒体資料」の媒体資料がダウンロードできます。 http://www.appbank.net/2009/10/26/iphone-news/59019.php
AppBankのユーザ属性
月間1,200万UUのモンスターサイトですね!
メインユーザーは20・30代の若手サラリーマンのようで、男性が78%と偏ってますね。 携帯ゲームのコンテンツが多いのですが、やっぱり男性の方が攻略方法を調べるところから、この男女の偏りは来るのかな?とも思いました。 ガジェットのコンテンツもありますし、男に偏るのは納得です。
Twitterのフォロワー数も26万超えていて、Facebookの6倍近くあります。
これは若い人が多いからFacebookよりTwitterの方が圧倒的に多いよなーという考察もできますし、TwitterはFacebookよりは匿名性が高いのでゲームというジャンル上、相性がいいのかなとも思います。
AppBankの記事広告の価格
- ネイティブ広告(SP):15万(600万imps想定、1週間)
- インリード動画広告(SP):30万(100万imps想定、1週間)
広告資料を見ていると携帯ゲームがメインの媒体だけあって、スマホの広告が充実しています。
動画広告もゲームには相性がいいかもしれません。
ELLE ONLINE日本版の媒体資料
もともと紙から発生した歴史のあるファッションメディアです。
メディア事業は海外の方が10年進んでいるという考え方があります。 日本の出版社の場合、紙媒体からWeb媒体を作るのって苦手なイメージがありますが、ELLE自体は元々海外のメディアですから、やっぱり上手ですよねー。
下記ページから「エル・オンライン媒体資料 2017.03-06 ver1.0」の媒体資料がダウンロードできます。
http://www.hearst.co.jp/brands/elle/media_kit_digital
ELLE ONLINE日本版のユーザ属性
- ユーザの平均年齢は32.9歳。
- 約7割が未婚の女性。
- 3割が東京在住のユーザ。
- 6割以上が有職者。
私はELLEのユーザでは無いので、ふーん( ´_ゝ`)って感じなんですけど、うがった見方をしちゃうと、6割以上が有職者→有職者が7割以下だと仮定すると、既婚でも有職者の方もいらっしゃいますから、未婚なのに働く必要が無い人がいるぞ!と嗅ぎつけちゃいました。
ちなみにショッピングエリアのランキングがあり「1位:銀座、2位:表参道、3位:渋谷・新宿」です。
男性誌の場合は購買力を表現するために、媒体資料にユーザの年収分布を入れているのをたまに見かけますが、ELLEの場合はショッピングエリアで表現出来ていますね。 お金の匂いがプンプンです!
ELLE ONLINE日本版の記事広告の価格
プレミアムジャック広告(1週間、58万imps想定)の640万に溜息が出てしまいますが、 おもしろいのはカテゴリごとに価格が全然違うバナー広告です。
- レクタングル or マウスオンエキスパンド
- ファッション:60万(10万imps想定、1週間)
- ビューティー:60万(10万imps想定、1週間)
- グルメ:45万(15万imps想定、1週間)
- インテリア:8.4万(2.8万imps想定、1週間)
- ウェディング:5万(2.5万imps想定、1週間)
ファッションとビューティーのimps単価が一番高いのがわかります。 単純にELLEに掲載するとファッションやビューティーが売れるというのもあるかもしれませんが、個人的には、業界ごとの予算における広告費の割合、の感じもしないではないです。 私自身はコスメ業界になぜか縁が多いのですが、コスメは他の業界と比べて広告費の割合は大きかったですしね。
まとめ
今回はターゲットもコンテンツも全く違う媒体資料を3つ見ました。
我ながらうっすい考察だなーと思いましたが、to Bだからimp単価が高いとか、ハイファッションだからimp単価が高いとか、そんな単純なものではなく、各媒体ごとにユーザのこと、広告主のことを考えて広告メニューを作っている、というのは伝わってくるかと思います。
あと、デジタルマーケティング的には媒体資料でユーザ属性が詳細にわかるわけですから、その属性にはどんな広告が良いのか、そこも参考になりますよね。
次回はコンテンツくくり、ターゲットくくりで見ていった方が、各社の違いが見えると思うので、もっと深い考察を目指しつつ、当記事は入門編として参考にして頂ければ。
そして、媒体資料を探すのに良いサイトを見つけたので、それも共有しておきます。 media-radar.jp
最後にメディアビジネスを理解するのに一番おすすめの本を記載しておきます。
冒頭の言葉と矛盾するようですが、メディアの仕事をしていて、これを読んでない人は本当に損をしています!
MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体 宣伝会議 https://www.amazon.co.jp/dp/B00AQZLZ2G/
5年後、メディアは稼げるか―Monetize or Die? https://www.amazon.co.jp/dp/B00DZF2HBC/